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コロナウイルスが変えた為替市場の潮流
新型コロナウイルスの感染拡大と経済活動の停滞により、世界の様々なお金の流れが変化しました。特に顕著なのは株式市場、そして外国為替市場ではないでしょうか。
FX取引をされている方、特に米ドル関連の通貨ペアでFX取引をされている方は
アメリカ国内のコロナウイルス感染拡大の深刻さ、またそれに伴って悪化した
アメリカ・中国の外交関係など、気になる事柄が多くあるでしょう。
FX取引においては様々な経済指標はもちろん、政治的な動向も大きな影響を及ぼします。
ただ、コロナ前のFX取引においては一定の”法則”が存在していました。”常識”と言い換えてもよいかもしれません。
例えば一般的に経済見通しが明るいほど、通貨は強くなると言われてきました。
しかしコロナウイルスの感染拡大により、米連邦準備理事会(FRB)が低金利の資金を市場に多く流していることが要因となり、為替市場(=FX取引)に大きな変化をもたらし、株式市場と為替市場が連動するようになりました。今はFX取引において最も重要なファクターの一つが「株価」です。
アメリカ国内ではコロナウイルスの感染拡大が未だに衰えを見せておりません。
世界中のFXトレーダーは錯綜する様々な情報に戸惑っているでしょう。
今回の記事ではコロナウイルスによって混乱する相場について、
現在の状況、リスク要因、今後の見通しについて解説してまいります。
コロナウイルスにより混迷する為替市場、FX取引の方向性はどのようなものでしょうか。
【現状】株高=ドル安基調が続いているが、政治リスクが燻る
まず株式市場、為替市場についての現状についてまとめてみます。
コロナウイルスが世界各地で感染を広げていることから、
3月にNYダウは大きく下げましたが、その後は再び上昇しており、
今年最安値を記録した3月23日の18,591ドルから現時点(7月28日)で
約43%の上昇を果たしています。
コロナ禍においても、経済指標も予想より好調な部分も見受けられます。
FX取引においても経済指標は重要なイベントですが、
例えば米国雇用統計などは最重要指標の一つです。
今月2日に発表された6月雇用統計ではコロナ禍においても良好な数字であったにもかかわらず、ドル高も株高も非常に限定的でした。
※非農業就業者数約480万人の増加、失業率は11.1%(前月は13.3%)
中国の経済指標も好調です。
6月30日に発表された製造業PMI(購買担当者景気指数)は50.9と3か月ぶりに改善しました。また7月16日に発表された4-6月期のGDP(国内総生産)は去年同期比で3.2%のプラスとなりました。コロナウイルスの感染拡大からの経済活動再開が早かったこともあり、上海株式市場は2018年2月以来の高値となっています。
米ドル円相場においてはコロナ以前は1ドル=112円でしたが、7月28日現在では105円台と円高ドル安傾向になっています。またユーロ/米ドル相場、豪ドル/米ドル相場においてもドル安となっており、コロナ後のドル安傾向は全体的な基調になっているようです。
しかしこれら株式市場の好調さは経済実態に即しているのか?という疑問を持つFXトレーダーは多いのではないでしょうか?コロナウイルスの及ぼした経済的影響はこんなものなのか?これからもっと大きな波乱があるのではないか?と思っている方も多いと思います。
【リスク要因】「アメリカ/中国の外交関係」と「株価の反落」
FX取引において経済動向はもちろんですが、政治動向も非常に重要です。
近年はトランプ大統領誕生以降、アメリカが対内重視の姿勢を打ち出しており、対外的に厳しい姿勢を取っています。それにより様々な摩擦が生まれ、政治的リスクが露見しています。
その最大のリスクが対中国外交の悪化であり、FXトレーダーにとって最も注視すべき事項です。今回のコロナウイルス感染拡大が中国を発端として起こり、その対応を誤ったとしてトランプ大統領はこれまで中国を批判してきました。
加えて中国が香港の統制強化を強めており、これにトランプ大統領が非常に強い反発を表明していることから、今後さらにアメリカと中国の関係が悪化していくことが予想されます。
この場合、為替市場(=FX取引)は非常に不安定なものになるでしょう。FX取引においては「情報」は非常に重要になりますが、外交関係は”水物”であり、コロナウイルス感染拡大と合わせて急激な市場変化が起こる可能性が高くなります。
またコロナ禍における経済実態と比較して株価が高くなりすぎているのではないか、という懸念が見られるようです。
現在の株高は先に述べたFRBが、コロナウイルス感染拡大への対策として、米ドルを低金利で市場に流していることで、米ドルを安く調達して株式に投資していることが要因であると考えられています。つまり「ドル安=株高」という基調となっています。今は経済指標が予想より好調な部分が見受けられますが、今後経済の失速が明らかになれば株価は大きく下落し、大幅なドル高に反転することが予想されます。FXトレーダーはこのリスクについても注視しておく必要があるでしょう。
【今後の見通し】短期ではドル安継続も、中長期では反転注視
まず重要なのは未だにアメリカ国内でコロナウイルス感染拡大が続いており減少傾向が見られない点です。
コロナウイルスの感染拡大は経済活動の停滞を生み、それらを支援するためにFRBは「ゼロ金利政策の維持」「利上げやバランスシート解消は当面検討しない」といった発言をしていることから、コロナウイルスの終息見込みが立つまではゼロ金利政策が継続する見込みです。
また直近では米政府によるテキサス州ヒューストンの中国総領事館閉鎖に対する、中国政府の四川省成都の米総領事館閉鎖の要求など、アメリカと中国の外交関係はより悪化しています。コロナウイルスを発端とした外交悪化に対するリスク回避の傾向は続いていくことでしょう。
このことから短期的にはドル安傾向が継続すると思われます。
しかしFX取引において、中長期でのポジション保有をされている方(もしくはその予定がある方)は大幅な株価下落に伴うドル高を警戒すべきでしょう。
アメリカ経済に関して楽観的な見方がありましたが、一方でコロナウイルスの感染拡大が衰えを見せないことから「アメリカの景気回復は遅れるのではないか」という悲観的な見方も出てきているようです。
実際に世界全体におけるコロナウイルス感染者数は増加傾向にあり、アメリカ国内においても同様です。このままいけば経済活動の停滞は避けられず、株安によるドルの買戻し、つまり「株安=ドル高」傾向にシフトする可能性が高くなります。
繰り返しになりますが、FX取引において重要なのは「情報」です。
コロナウイルスに関する情報、経済情報や政治情報などの様々な情報が、FXの開催時間であろうと開催時間外であろうと、時間を選ばずに飛び交います。為替市場はこれらの情報が重なり、交じり合って複雑かつダイナミックな市場変動をもたらします。FX取引はそれゆえに大きなリスクと、それに見合うリターンが得られます。
コロナウイルスの感染拡大の状況と政治リスクを鑑み、FXトレーダーは慎重に動くべきでしょう。
今回の予測はあくまで個人的な意見です。
この記事を参考にしてFX取引をされて損失が出たとしても、
当方が責任を負うことはございませんのでご了承ください。