週刊ポスト 2005年9月9日号
記録すらない沈没潜水艦の謎に迫るミステリーのような実録
「シャドウ・ダイバー」 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち
ロバート・カーソン・著/上野元美・訳


海底に沈んだままの昔の客船や軍艦に潜り、遺物を持ち帰る−。スキューバ・ダイビングとは全く性質を異にする、このレック・ダイビングは、常に死と隣合わせにある。
1991年、レック・ダイバーたちが、ニュー・ジャージー沖の水深70メートルの海底に沈む潜水艦を発見したときからこの物語は始まる。その潜水艦の存在は誰にも知られていなかった。ましてや、アメリカの海軍にさえもその記録は存在しなかったのだ。
最初は敵同士だった二人のイバー、.ジョン・チャタトンとリッチー・コーラーがこの船の正体を突き止めるために友情を深めてい<が、それだけではなく、なぜこの艦は沈んだのかと
いう第一級のミステリーを二人は最終的には解決する。
ごの本は冒険物語でもあり、人情物語でもあり、歴史物語でもある。ダイバーたちの興奮とスリルは、結婚生活までも犠牲にすることになるが、仕方ないことであっただろう。これが小説であれぱ、理解のある妻を演じさせることができたであろうが、事実は小説よりもはるかに厳しいものだ。
主人公以外に登場する人物たちも迫真の筆力で描かれている。10代のドイツの水兵が二度と祖国の地を踏むことはないと認識しながら、最後の日々を艦内に閉じこめられたまま過ごすところなど、読みながら吸い込まれそうになったほどの臨場感に濫れている。
私は米国滞在中に筆者カーソンに会う機会があったが、タイトルの「シャドウ」には、戦争が落とした影、真っ暗な深海には影でしか映らないダイバー、亡くなった船員の影、いろいろな
意味が含まれているという。特に沈没船.は普通触らないことになっているので、それを捜索する際の良心の各めが落とす影の意味は深いというのだ。、
れが小説ではなく、すべて実際に起こったことであることはとても重要である。これこそノンフイクションの追カであり、しかも、一切潤色しないで書くことは試練である」
確かにこれがもし小説なら、迫力が半減してしまうほど、書かれた内客がすべて事実であることの意味は大きい。

<著者紹介>シカゴ生まれ。ウィスコンシン大学卒業後、「シカゴ・サンタイムズ」に入社。現在は「エスクワイア」で記者・編集者として活躍。本書は初の長編ノンフィクション。

関連書籍

シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち ハヤカワ・ノンフィクション
ロバート・カーソン (著), 上野 元美 (翻訳)
 
 
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