ダニエル・ピンク週刊ダイヤモンド 2003年12月20日 新年特大号
複数の仕事を持つことは投資と同様リスク分散だ
元米国労働長官補佐官 「フリーエージェント社会の到来」の著者
ダニエル・ピンク

急速に変わる日本の雇用環境や就労スタイル。「SOHOの日」実行委員会の招聘で来日講演を行った元米国労働長官補佐官ダニエル・ピンク氏を直撃した。


東京で開催された第一回インディペンデントビジネスフォーラムでは、あなたの講演を聞きに多くの独立時業者が出席した。日本では自発的なケースばかりではなく、突然会社を解雇されて“フリーエージェント”(組織の庇護を受けずに自らの力でビジネスを築き上げる人)にならざるをえないケースも多い。

フリーエージェントになる計画がなくても、会社に勤めているときから思考態度(マインドセット)を変えておく必要がある。今、目の前にある仕事が、明日には消えてなくなる可能性があることを認識しなければならない。かなりの時間を要するかもしれないが、解雇されて急に思考態度を変えるのは不可能に近い。自分の運命は自分で決めるという気持ちは、組織に属していても同じ。雇用を保証してくれる会社はもはや存在しない。日本でも同じだろう。

日本では最近“週末起業”が注目されている。

自分のビジネスを始めたとしても、必ずしも会社を辞める必要はないと思う。安定した会社に勤めていても、いつ解雇されるかわからない時代。そのリスクを少しでも軽減するために、自分で白分のビジネスを開拓することはとても重要だ。

米国の状況はどうか。

今、米国では複数の仕事を持っていることが当たり前になっている。実際に独立するまでの試験期間としてサイドビジネスを持つ考え方もあるが、もう一つはリスク分散という考え方だ。株式投資と同じで、一つの会社に白分の能力や時間のすべてを投資することはリスクが大きい。実際、米国では仕事によって名刺を使い分けている人が目立っている。名刺交換しようとすると「どの名刺が必要か」と聞かれる場面によく出会う。

就労スタイルは今後どのように変化するのか。

何年後か、一つの職業だけに就いていた時代を振り返って、なんて変わった世界だったのだろうと思う日が来るのではないか。組織にいてもリスクがあり、フリー工ージエントにも多くのリスクがある。どちらのリスクを取るかは、白分で決めなければならない。
個人がフリー工ージエント化する一方で、企業はM&Aを繰り返して拡大し続ける。将来は、“象の経済(大企業)”と“ねずみの経済(フリーエージェント)”しか存在しなくなり、中間規模の経済は消えるだろう。

自らビジネスを起こして成功する人の条件は?

これなら絶対、という唯一の正解はない。置かれた状況や意志の強さ、能力など個人によって条件は違う。何千とおりもの方法がある。いずれも、常にアンテナを張っていることが必要だ。

組織を離れたときに、最も大切なことは何か。

テクノロジーを駆使すれば、昔なら一人では不可能なことが、今はできるようになった。一方で、組織にいるときより、人脈がはるかに重要になってくる。
フリー工ージエント社会は会社組織よりもはるかに透明性が高い。なにより重要なのは、会社にいる人間よりも信頼される人間にならないといけない点だ。
水平のネットワークでつながるフリー工ージエントは、いったん、ある個人との人間関係を失うと、その人の人脈まで失うことになる。必然的に会社にいるときよりも、誠実な行動をとらざるをえなくなる。

ダニエル・ピンク 39歳。クリントン政権下で労働長官補佐官。1995〜97年ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた後、フリージャーナリスト。

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フリーエージェント社会の到来
フリーエージェント社会の到来.
ダニエル・ピンク(著) 池村千秋(訳) 
 
 
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