ビル・エモット/Bill Emmott
英「エコノミスト」誌元編集長が語る
低所得者層への分配を.
(週刊アエラ 2010年7月12日号)
日経平均株価が今年最安値となる一方で、日銀短観は2年ぶりにプラスに。
日本経済は回復しているのか。英「エコノミスト」誌元編集長のビル・エモット氏に聞いた。
東京株式市場で日経平均株価が急落した6月30日、円の対ユーロ相揚は前日から8年7ヵ月ぶりの円高水準になった。ユーロ安はギリシャの財政危機に端を発しているが、このまま続けば日本経済にどんな影響があるのか。
「EU経済はアメリカよりも少し大きく、世界最大の経済圏。日本経済だけではなく、ヨーロッパと貿易関係にあるすべての国に影響するが、日本は貿易先をアジアの新興国にかなりシフトしているので、マイナス影響は他国に比べると少ない」
日本銀行が7月1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の景況感を表す業況判断指数は5四半期連続で改善し、2年ぶりでプラスとなった。日本経済は少し持ち直しているように見える。
菅首相は民主党代表選の立候補の際に、日本経済の再生と成長を最大の課題として、デフレ脱却を重要課題と位置づけた。
デフレ脱却策として、エモット氏はこう語る。
「日銀は少し拡張的な金融政策でデフレを容認しているが、デフレを打ち負かすにはもっとアグレッシブに進めるべきだ」
サービス行を規制緩和
エコノミストの波頭亮氏は、近著『成熟日本への進路』の中で、日本は戦後約50年続いた「成長フェーズ」が終わり、「成熟フェーズ」に入ったと指摘している。つまり日本はもはや「成長戦略を必要としない」ということだ。
代わりに必要だと提唱しているのが、「産業構造のシフト」。一つの柱として医療・介護サービスを担う産業を内需拡大型主力産繁として拡充し、もつ一つの柱として石油や食糧の輸入代金を稼ぐための国際競争力のある高付加価値型輸出産業を育成することとしている。
エモット氏は以前から日本経済復活のために、サービス業の規制緩和を提唱している。
「日本のサービス業はGDPの7割を占めて.いるのに非生産的で非競争的。もっと投資と競争を促進するために規制緩和や自由化を進め、生産性をあげていかなければならない。
2007、08、09年の経済協力開発機構(OECD)の提言では、日本は電話・通信、電気供給、卸売り・小売り販売、空港、輸送産業の規制緩和をすべきだとあったが、同意見。私はさらにメディア、広告、法律業務も加えるべきだと思う」
低所得者層への支出を
波頭氏は経済が「成熟フェーズ」に入ると、成長論よりも分配論の議論が必要だと主張する。エモット氏も日本が復活する条件として、こう付け加える。
「民主党は子ども手当を直接給付したり、高校までの授業料を無料化したりする方法で、所得の低い階層のための福祉に公共支出をしている。消費を促すためにも、この方法に一層シフトすべきだ」
私は05年7月、ビーター・ドラッカー氏にインタビューをしたが、そのとき彼はこう話していた。
「日本は危機状況にあるのではなく、transition(移行)期にある」
95歳で天寿を全う3ヵ月ほど前だったが、時代を捉えた正確な評価だった。
さらに、「日本は時代が変わったことを認め、その変化に対応するための意識改革が必要である」とも話していた。
最近の政治的な混乱を見ても、日本が移行期にあることは明らかだ。そういう時期に、民主党がどんな経済戦略を猫けるのかが問われている。
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