A. 日本の没落というよりはむしろ、日本が世界の経済大国のなかから姿を消すということです。
まず、私は「アジアにこそ未来がある」と考えています。世界の半分以上の人びとはアジアで暮らしており、21世紀におけるアジアの歴史は、そのまま世界の歴史になるでしょう。歴史をさかのぼってみると、文明の誕生から西暦1500年まで、最も先進的な文明は中国でしたが、1500〜2000年ではそうはならなかった。しかし、2000年からは、再び中国の時代になるだろうと思います。
Q. 中国の強さをどのようにとらえていますか。
A. 中国には、第一に膨大な人口があり、起業のスキル、知性、教育重視の姿勢、商業本位主義の長い伝統、起業精神、創造性、芸術性など、優れた文明を生み出す要素がすべて揃っています。
彼らがその強みを発揮できなかったのは、毛沢東の共産主義が、中国本来の歴史的な特徴を抑圧してしまったからです。
しかし、今中国は劇的に変わろうとしている。ある程度は社会主義ですが、経済的なパワーを抑圧しない。一方、今や世界全体が中国の発展に資金を供給しています。米国は年間何千億ドルもの対中貿易赤字によって、将来の中国を育てているのです。
マレーシア、シンガポール、インドネシア、香港など至るところにいる華僑は、起業家として大きな成功を収めています。たとえばインドネシアでは、2億人の人口のうち中国系はわずか400万人ですが、富の半分以上は彼らが所有しています。今後20〜30年のスパンで見ると、中国が共産主義の足枷を捨てるにつれて、こうした経済的強みが急速に顕在化するでしょう。
Q. 日本はどうなるのでしょう?
A. まず、日本の強みとは何でしょう。おそらく日本は、今日の世界で最も教育水準の高い国です。識字率は事実上100%。日本が持つ最も偉大な資源は、人材なのです。
ところが、今日本では高齢化が進んでおり、今後20年を考えると人口の維持さえままならない。深刻なのは、新たなアイデアのわく源であり、社会を動かしていく活力の源泉である若い世代が不足しているという点です。
Q. 高齢化が最大の間題でしょうか。
A. それに加えて、日本の教育制度には決定的な問題がある。今の日本の教育は、「コンセンサスをつくりあげること」を第一義としている。コンセンサスは、時代をリードするものではなく、現状に従うものです。これは大きな違いです。
教育がなすべきことは二つあります。一つは、日本人が世界の他のどの国民にも負けないように、平均的な市民が社会における白分の役割を果たせるように準備させること。しかしもう一つ重要なのは、宝石を見つける、つまり歴史を変えるような人びとを見つけ、彼らを特別扱いすることです。すべてが「皆と同じように」なることを求めるシステムでは、未来への出発点になる創造的な個性を圧殺してしまいます。
Q. 日本は急成長する中国とどのような関係をつくるべきでしょうか。
A. 21世紀末の日本にとって最大の課題は、日本が中国のパートナーになれるよう、過去を清算するという義務を果たすことです。そのうえで、日本は、中国の成長に対して、資本や経営スキル、生産技術を提供すべきです。この問題を解決しないかぎり、21世紀の日本は、さして重要でない国になってしまうでしょう。
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