ディック・ゲッパート/Dick Gephardt
ロビイストに天下ったゲッパート元下院議員
日本たたき議員の変節
かつての「日本たたき」の急先鋒が、米国の外交政策をめぐって、
その変節ぶりに世論から批判を浴びている。

(AERA 2007年12月31日号)


1977年から2005年まで米下院議員を務めたディック・ゲッパート氏と言えば、80年代ジャパン・バッシングの急先鋒として知られる。

ゲッパート氏は2003年、「アルメニア決議案」の共同提案者だった。これは、100年ほど前に、オスマン・トルコ帝国で150万人のアルメニア人が殺害された事件を「大量虐殺」に認定する決議案のことだ。この決議案にトルコ側が激怒したことは言うまでもない。トルコ側の言い分はこうだ。

「アルメニア人は、虐殺の結果死んだのではなく、第一次大戦に関連した紛争で死んだ」

120万ドルで契約

ところが、そのゲッパート氏が今年5月に、DLAパイパーという法律事務所と120万ドルで1年契約を結び、今度は、トルコ政府のロビイストになったのだ。トルコ政府がDLAパイパーと契約したのが、5月10日。その翌日、ゲッパート氏を代理人として登録したほどの迅速な行動だ。

米下院外交委員会は、アルメニア決議案を10月10日に可決したが、ゲッパート氏は可決阻止に余念がなかった。ゲッパート氏はトルコのナビ・センソイ大使を連れて、ナンシー・ペロシ下院議長や他の民主党リーダーたちにも会った。

この変節とも言えるゲッパート氏の行為は、アルメニア系アメリカ人を激怒させた。さらに、ブッシュ大統領は10月16日、ペロシ氏に「議会で投票に持っていかないように」と電話をかけたという。

もう一人の強力なロビイストは、1999年まで下院議員だったロバート・リビングストン氏だ。彼は片っ端から議員に電話をかけたり、直接会ったりして、翻意を促した。実際、二十数人の議員はアルメニア決議案を支持するのをやめたという。

翻意した議員の一人、ドゥーグ・ランボーン氏(コロラド州共和党)は、「大量殺害と言語に絶するほどの残忍な行為が起こった事実は何をしても変わらないが、アメリカがグローバルな対テロ戦争で、トルコを含め、同盟諸国の援助を必要とする大事なときに、この拘束力のない決議案は、不安要因になる行動だ」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。

一方、ゲッパート氏は、私の取材に対し、こう答えた。
「どんな問題でも、議員に与えられる正確な情報が増えると、それだけ議会は適切な行動に行き着く」
多くの同僚にも個人的に会って説得したことを認めた上で、ゲッパート氏はさらに続ける。
「確かに、オスマン・トルコ帝国で起きた行為を『大量虐殺』であると認定する運動を昔、積極的に支持したことがあるが、この決議案をいま可決させることで、トルコを敵に回すことは、我々がグローバルな安定を求めているときに、いかなる努力も損なわれ、マイナスになる」

天下り制限を求める声

今回のゲッパート氏の行動は、日本の天下りに相当するリボルビング・ドア(回転ドア)に制限を加えるべきだという声をさらに大きくした。マーシー・カブター下院議員(オハイオ州民主党)は政府高官や議員が、外国代理人になることを終身禁止すべきだという。
「政府高官や議員が辞めたあとに、外国のためにロビー活動するのを国民が目の当たりにすると、政府への信頼が揺らぐ」

ゲッパート氏はこの忠言に対してこう反論する。
「我々は何も外国のために、特別取り計らってもらうように動いているのでほなく、俎上にのぼった問題について、単に侃々謁々の議論が確実に起きるように努力しているだけだ」

この「アルメニア決議案が議会で投票にかけられるかどうかは、最終的にナンシー・ペロシ下院議長にかかっている。

 
 
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