ジョン・ウッド/John Wood
社会起業にかける元マイクロソフト社幹部
やっと見つけた「天職」

世界的なIT企業、マイクロソフト社の幹部から、社会起業家に転じたひとりの米国人がいる。
世界の子供に学びの場をつくるために。

(週刊AERA 2007年11月19日号)


寝食を忘れて、全身全霊で打ち込んだため、デートの
時間もなく、ガールフレンドも去っていったという。
提供:RTR (http://www.roomtoread.org

日本では、まだ馴染みの薄い言葉だが、社会起業という、NPOでもなけれは、ベンチャー・ビジネスでもない新しい事業形態がある。2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が、貧しい自営業者に資金を融資する目的で、バングラデシュに設立したグラミン銀行がその典型であり、それは貧しい人々の経済的自立を大いに助けた。

社会起業かはこのように社会的使命とビジネスを結びつけたものである。ビジネスを営み、事業効率を目指す点では同じだが、理由と目的が異なるのだ。社会のある面にに、具体的な、プラスの変化をもたらすという大きな目的を持つ。

ジョン・ウッド氏が、まだ35歳であった1999年末に設立した「Room to Read」(RTR)も典型的な社会起業である。マイクロソフトのエグゼクティブとしてアジアに数年駐在していたウッド氏は、貧困のどん底にいる子供たちを目の当たりにした、とりわけ長期旅行の最初に、ネパールに足を踏み入れたときのショックは大きかった。

投資家から大金の寄付

「図書館はあったが、本がほとんどなかった。これで、貧困のサイクルが断ち切れるはずがない、あまりにも不公平だ、と思いました」

アメリカや日本のような先進国は、貧しくても教育を受ける機会があるが、ウッド氏が見た貧困は、勉強したくてもその手段さえない状熊だった。ネパールの非識字率は、70%という想像を絶する高さだ。ウッド氏は一念発起、マイクロソフト時代に培った商才を生かし、RTRを立ち上げた。本を送るだけでなく、図書館を作り、さらに学校まで建てるようになった。教育は、現地語だけでなく、英語も学ばせるバイリンガル教育だ。「最初はもちろん苦労したが、かなり大々的な方法でやらないと成果が出ない。成果を出すというマイクロソフト文化がここで生かされました」

自分が蓄えていた貯金はあっという間になくなったが、シリコンパレーの名のある投資家らが大金を寄付してくれ、それがさらに信用につながった。

ウッド氏は、自分の人生を『Leaving Microsoft to Change the World』(邦訳『マイクロソフトで出会えなかった天職』ランダムハウス講談社刊)にまとめた。その本を読んで賛同し、快く寄付してくれた人も多く出てきたという。

1千万人に教育の場を

さらに、この9月27日、ビル・クリントン元米大統領が始めたクリントン・グローバル・イニシアチブのセレモニーで、2010年までに、現在の2借に当たる1万の図書館を作ることを宣言。

RTRはサンフランシスコを拠点にしているが、世界の主要都市に30ほどの支都を持つネットワークがある。世界中で読み書きができない人が8億人以上、初等教育を受けていない予供が五億人いる状況で、RTRは2020年までに1千万人の子供たちに教育の場を提供することをめざしているのだ。

「Room to ReadのRoomは、文字通り『読書をるための部屋』という意味以外に成長のための、快適な空間』という心理的な意味も含まれています。経済的に成功した日本は、自国のことだけを考えずに、本当に貧しい他国の子供を救済する道徳的課題があると思います」とウッド氏は日本人にメッセージを送る。

「たくさんのお金を銀行に預けていても、誰も幸せにならない。ますます貪欲になるだけ。お金は世界を変えるために有効に使ってはじめて価値があるのです」

日本支部は今年4月に立ち上がったぱかりだ。日本支部で活動するスーザン・ロッジさんと中島恵さんはこう意気込みを語る。「日本人は貢献したいと思っても方法がわからない人が多い。でも私たちが方法を知っているので心配いりません」
 
 
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