ジェフリー・K・ライカー/Jeffrey K. Liker
利益2兆円へ!米ライカー教授が看破した「トヨタウェイ」の秘密
(週刊ポスト 2004年9月10日号)


ザ・トヨタウェイ(上)(下)
ジェフリー・K・ライカー (著), 稲垣 公夫 (翻訳)



2004年3月期決算で「純利益1兆円」を突破し世間を驚かせたトヨタ自動車だが、今度は通期の営業利益で“2兆円突破”の可能性すら出てきた。4〜6月期連結決算で、四半期の営業利益が前年同期比32%増の4486億円と過去最高を記録したからだ。

そんなトヨタの“最強の秘密”に迫った『ザ・トヨタウェイ』が日米で話題となっている。昨年12月に発売されたアメリカでは10万部、日本では今年7月発売の翻訳本が3万部を超える売れ行きだ。著者はアメリカでのトヨタ研究の第一人者、ミシガン大学経営工学部教授のジェフリー・ライカー氏。

同著では、トヨタの強みがその事業哲学「トヨタウェイ」の、「短期的な財務目標を犠牲にしても、長期的な考えで経営判断をする」「作りすぎのムダを防ぐ」「新しい技術ばかりに頼らず、安定して動く“枯れた技術”を優先する」などの、14の原則から解読されている。著者のライカー氏にトヨタの現状を聞いた。

−あなたの考えるトヨタの最大の強みはどこか?

「製品開発において極めて独自の方法を採用していることが挙げられます。他のメーカーの場合、新車の開発計画を立てたら、車のデザインや設計図を1つに絞り、そこに全員が傾注する。ところがトヨタはいくつかのアイデアを並行で進めるのです。例えば『プリウス』の場合、80種類ものハイブリッド技術を同時開発し、それをさらに10→4と絞り、最終的に最良の技術を採用しました。
この『セットペース』と呼ばれる手法は他のメーカーには真似できません。でも実は、開発に失敗するとゼロ地点に戻らざるを得ない他のメーカーと比べて、すぐに立て直しの効くこのやり方ははるかに効率的なのです」

−終身雇用制のないアメリカでもトヨタ流は有効か?

「今、アメリカの労働者は2〜3年ごとに転職するという状況ですが、アメリカのトヨタ社員は7割以上が長期的に働いている。そんな彼らがアメリカで『トヨタウェイ』を担っています。まだ本社には及びませんが、日本から派遣された技術指導者の“洗脳”の成果もあり、着実に結果を出しています」

−業績が良すぎると、今後アメリカで反感を買う恐れはないか?

「トヨタは他社のようにメキシコや中国に組み立て工場を置かず、雇用も確保しているので好意的に受け入れられている。現時点では貿易摩擦は考え難いでしょうね」

トヨタのさらなる成功を確信するライカー氏だが、死角はないのか。日興シティグループ証券の自動車担当アナリスト・松島憲之氏はいう。
「トヨタの北米工場でも売れ筋は大型車なので、今後原油価格の上昇が悪影響を与える可能性はあります。ただ、北米で利益が出なくてもヨーロッパやアジアでカバーできる状況にあるので、さらに成長する可能性は高いでしょう」

躍進が続きそうだ。

 
 
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