月刊PLAYBOY日本版2004年1月号(11月25日発売)
Michael Moore's lectures about his mission
新刊をひっさげたマイケル・ムーアに直撃インタビュー
「ブッシュは連続嘘つき魔だ。彼はもう終っている」

あのマイケル・ムーアが、大ベストセラー『アホでマヌケなアメリカ白人』に続き、『オイ、ブッシュ、世界を返せ!』(原題“Dude, Where's My Country?")をアメリカで10月に出版した。「ブッシュを大統領の座から排除しない限りアメリカに望みはない」と断言するムーアはさっそく全米33都市を23日間でまわるブック・ツアーを閑始。このインタビューは、10月18日、UCバークレー校で行われたレクチャーとそのときのインタビューをもとに構成したものである。

今我々がやるぺきことは民主党候補をプッシュしてやること

PLAYBOY(以下PB) ブッシュ政権が今の政権で終わり、2004年に新しい政権が生まれるために、今国民にできることは何ですか?

マイケル・ムーア(以下M) 不思議なことに、僕はこれからの12ヵ月間については楽観的だ。我々のポジションの70-80%に同意する立候補者が出てきて、ブッシュを打ち負かすことができると信じている。単にブッシュを打ち負かせるなら誰でもいいというわけではない。それは非常に危険な考え方だ。というのも単に民主党がブッシュ追放だけに必死になっているとなれば、政策に対する正しいポジションを取る必要がなくなってくるからだ。ただブッシュを追放することだけに神経を使えば、誰でもいいことになる。

だから、僕が今みんなに言っているのは「今は誰も支持していない」ということだ。今この3ヵ月で我々国民がやるべきことは、今出ている民主党の候補者にいろいろな問題についてより強いポジションを取るようにプッシュすることだ。今我々には影響力があるから、我々が彼らを必要とする以上に彼らは我々を必要としていることも確かだ。

例えば、ハワード・ディーン(民主党立候補者)の本部に電語や電子メールをすればいい。「今、誰に投票すべきか考えているところだが、あなたがある犯罪に関して死刑を支持していることを懸念している」とか「ペンタゴンの予算を削減しないとあなたが言ったことを懸念している」とか「金米ライフル協会から最高の成績をもらっていることを懸念している」とか言えばいい。ハワード・ディーンはなかなかいいやつだから、今よりももっといいポジションを取るようにプッシュしてやろう。それこそ今我々がやるべきことだ。来年の1〜3月になると、いろいろな問題に関する立候補者たちのポジションが最終的に固まるので、我々は誰を支持するか決めやすくなる。今のところ、いい知らせは、我々が支持している考えの70-80%に賛成する民主党の立候補者が結構いるということだ。

今年は、両党の候補者に挑戦する独立党派はないから、民主党に焦点を合わせて、最適な任命者を選ぶように、積極的に行動しなければならない。もし、民主党に任せていたら、ゴアと同じような状況になってしまうから、民主党に任せてはいけない。民主党は惨めで見ていられないね。勝てるときも勝てないのだから。

PB あなたが立候補すればいいのでは?

 とんでもない。僕は長生きしたいよ(笑)。

PB アメリカは、共和党が強くなり、かなり右派に寄ったと言われているけれど、どうお考えですか?

 この国は、頑強で保守的な共和党員、右翼、保守派であふれかえっていると報道されているが、実際は、リベラルで左派になった。主流の世論調査では、ほとんどのアメリカ人が、中絶賛成派で、より高い最低賃金を望み、マイノリティ優遇措置を支持しているように、すべての間題でリベラルな考え方だ。

共和党は、国民が右派の人を欲していないことをわかっている。というのも昨年の11月に、軽蔑されている知事(グレイ・デイヴィス)と右派の人(ビル・サイモン)の選択を迫られたとき、選ばれたのは軽蔑されているほうだったことを覚えているからだ。


ブッシュは何よりも、アメリカの中産階級を殺すことに決めた

PB 最初に書かれた『アホでマヌケなアメリカ白人』やドキュメンタリー映画の『ボウリング・フォー・コロンバイン』が国民に与えた影響はかなりのものと思いますが。


 あの本は世界中で400万部以上売れ、昨年アメリカのノンフイクション部門でベストセラーになった。映画も今までの記録を3回塗り替えた。だから、アメリカ国民に私のメッセージが浸透したことは間違いないと思う。ただ、最初の本は初版5万部刷ったが、刷り終わったときに、ちょうど9・11のテロ事件が起きた。版元からはブッシュ批判の部分を削除し、半分書き直さないと出版しないと言われた。もしあのとき書き直していたら、僕のメッセージは国民に伝わっていなかっただろう。おかげで半年近く倉庫に本が眠っていたけどね。

PB オスカー賞受賞のスピーチでブッシュ政権を痛烈に批判しましたが、暗殺されるとは思わなかったのですか?

 あのときは正直言って、ステージで殺されるのではないかと思い、ずっと恐怖に怯えていたよ。実際、3月の開戦時に、戦争に反対しようものなら、どれほど孤立しただろラ。反戦の言葉を一言も口に出せないほど、アメリカ国民は戦争に賛成していた。職場でも学校でも反戦の言葉を口にする勇気は講にもなかった。もし何か言ったとしたら、すぐに「私は軍隊を支持する」と付け加えないと大変なことになった。戦争に反対しても軍隊を支持するのは自然なことだ。反戦の声は、本当に沈黙させられたね。でもまさか、オスカー賞受賞のときに、いずれ自分の意見がここまで国民に浸透して、“勝つ”とは思わなかった。おかしい話だが、オスカー賞のスピーチが終わって舞台のはずれにタキシードを身につけたインターンが2人いた。そこから舞台裏に入っていくと、みんな大声でお互いに言い合っていた。戦争に賛成するものと反対するものがけんか腰で言い合っていた。でももっとおかしいのは、受賞スピーチが終わって最初に耳にする一言が、「シャンパン?」「(口臭予防の)ミント?」なんだ。これはほとんど知られていない事実だよ。ちゃんとシャンパンとミントを持ってステージのはずれに立っているんだから。そのとき「このくそアメリカがミントを必要としているのか」と思ったよ。

PB 先ほど、アメリカはリベラルで左派になったと言われたが、アメリカが変わってきたと感じたのはいつ頃から?

 アメリカ国民の考えがとくにシフトしたのはこの2,3ヵ月だね。国民はブッシュに嘘をつかれていることにようやく気付いたようだ。ブッシュ政権は次から次へと国民に嘘をついてきた。サダム・フセインが9・11の同時多発テロ事件にかかわっているとか、フセインは大量破壊兵器を持っているとか、生物兵器を持っているとか、移動車付の兵器があるとか。そのひとつをよく見ると、風船を膨らませるためのヘリウムタンクだった。そラやってイラク戦争を始める言い訳を作って、軍隊をイラクに送ったんだ。

無知を強制されたような杜会に住み、そこのリーダーがイエール大学の卒業式でスピーチをして、そこで「私は成績がCマイナスだった」と自慢するくらいだから、どうしよラもない。マヌケであることを自慢することが格好いいと思っているんだ。テレビのニュース・チャンネルにもマヌケ専用のチャンネルがあるくらいだ。

嘘を報道することにアメリカの主流メディアものってきた。本当にアメリカについての真実を知りたかったら、イギリスの『ガーデイアン』紙を読むことだ。今はインターネットでアクセスできる。「ガーデイアン』紙なら嘘をつくことはない。インターネットがない時代なら、嘘をつかれていることに気付くまで何年もかかるが、今なら遅くても2,3ヵ月でわかってしまう。

イラク戦争について言えば、我々がどれほどブッシュに嘘をつかれてきたかを説明するのに、僕はすべての材料を持っている。2冊目の本『おい、ブッシュ、世界を返せ!』は、『アホでマヌケなアメリカ白人』をシュレッダーから救ってくれた司書に一部捧げている。また、2人のカトリックの修遣女にも捧げられている。彼女たちは、コロラド州にある核兵器のことで騒いで血を流したことで今刑務所に入れられている正義感の非常に強い人だ。また、レイチェル・コリーにも捧げられている。彼女は礫き殺されるまでイスラエルのブルドーザーの前に立ちはだかった勇敢な女性だった。

イラクには、今も米軍が残り、若い兵士が頑張っている。アメリカの親や兄弟は、もうニ度と会えないと思いながら、毎日を過ごしている。この前シカゴにいたときに、ある女性が私のところにやってきて、「私の息子はラッキーだった。負傷しただけで、今ここに戻ってきたから」と言っていた。兵士のほとんどは、アメリカ経済に元気がないから、イラクに行っているんだ。今のアメリカ経済の状況では、ほとんどの人が苦しんでいて、恩恵を被るのは少数だからね。彼らは、兵役に登録せざるを得ない状況に置かれている。我々のために、彼らは命を犠牲にする覚悟をしている。18-20歳の若者が現実に我々のために死ぬ覚悟でいることは信じられないことだ。本当に国防のためなら語はわかるが、そうではない。もう300人以上も死んでいる。彼らは何のために死んだのか。彼らの親に何と言えばいいのか。石油のために死んだというような単純なことではないだろう。石油大手のハリバートン(チェイニー副大統領がかつてCEOをやっていた企業で戦後復興に深く関与)だけがこの戦争の唯一の受益者だとしたら、若い兵士たちは、この企業のために死んでいったのか。これほど下劣なことはいまだかつて聞いたことがない。こんなに大規模な犯罪は見たことがない。アメリカ国民に嘘をついたのだから。ブッシュは連続嘘つき魔だ。これ以上ひどいことはできない。我々がイラク人に何をしたのかはもう忘れてほしい。ブッシュは何よりも、ブッシュを支持した、まさにそのアメリカの中産階級を殺すことに決めたのだから。ブッシュは信じられない間違いをおかした。その結果、次の選挙では選出されることはなくなった。よく聞いてほしい。ブッシュは見込みのない、アホなのだ。もうブッシュは終わっている。


最終的にはアヌリカ企業がアメリカ政府になってしまう

PB ブッシュ政権から何か言われたことはないですか?


 彼らは僕とはコミュニケーションをしないよ。でも、民主党のほうは、立候補者のうち5人が私に助けを求めてきた。そのうち4人に会ったが、具体的にどうやって助けを出すかはまだ決めていない。

ご存知かと思うが、僕はウェズレー・クラーク陵軍大将に手紙を書いて、立候補するように健した。彼は、ブッシュ政権がフセインと9・11を関連づけようとしていたのを知っている人物だ。彼は、ブツシュ政権が嘘をついていることを知っている。ペンタゴンがその戦争を望んでいなかったことを知っている。我々は、ウォルフォウィッツやラムズフェルドやチェイニーやブッシュによってこの戦争に引ぎずりこまれたことはわかっている。この戦争はパウエル・ドクトリン(勝てる戦争のみを選択的に行う考え方)に反している。出口戦略、撤退作戦のない戦争はしてはいけない。米陸軍大将がこの戦争は間違っていたと言えば、かなりパワフルな声になると思う。NATOの総司令官であった彼がそう言うことは非常に意味があることだ。きちんとした情報源から出ている発言だからだ。候補者の中に陸軍大将も医師も必要だ。ブッシュの尻を蹴るには陸軍大将が必要であるし、健康保険のない国民が4300万人もいるんだから、医師も必要だ。

PB 次の選挙は今まで以上に重大ということ?

 もし次の選挙でブッシュがまたさらに4年間大統領をやることになれば、憲法、公民権、環境についてブッシュ政権がやらかしそうなことを考えるとアメリカはもうおしまいだ。アメリカ企業が我々国民の生活をますますコントロールするようになり、最終的にはアメリカ企業がそのままアメリカ政府になってしまう。もし、ブッシュが勝てば、僕の目の黒いうちにアメリカが回復するとは思えないね。

有権者の3分の2は、女性か有色人で、アホの白人ではない。そういう人のほとんどは現実に幻滅している人たちだから投票に行かない。何とかしてそういう人たちを投票に行かせるようにしなければならない。

PB 最近カリフォルニア州で行われたリコール選挙をどのように見ますか?

 この暗い雲の中に3つの希望の兆しを見た。1つ目は生まれて初めてだが、選挙に勝つために、共和党が左派に動いたのを見たことだ。普通は、民主党が保守的に聞こえるようにするために右派に動くが、シュワルヅェネッガーは、この選挙で、中絶賛成派だの、銃規制に賛成だの、環境を大切にするだのと宣言しなければならなかった。カリフォルニア州民は、デイヴィスを嫌うのと同じくらい、彼に対抗した若派の共和党が嫌いだからだ。右派のポジションを持つ人は投票されないことに共和党は気付いた。カリフオルニア州はシフトして、リベラルになった。彼らは偽のリベラルにならざるを得なかった。「我々に投票しても大丈夫」と、州民を説得できることを期待して、そうならざるを得なかった。彼らがそうせざるを得ないと感じたことは、我々にとって嬉しいことだ。

2つ目は、この選挙は、共和党のように振る舞おうとする軟弱な、優柔不断な民主党を拒否したことだ。彼らは共和党のように振る舞って、どうして支持をなくしたのか不思議に思っているだろう。グレイ・デイヴィスを拒否したことはいいことだ。民主党がこれで目が覚めればいい。

3つ目は、この選挙の間、ブッシュは一回も出てこなかったことだ。一言も口出ししなかった。市民が自分たちのリーダーを決めるときに、一言でも発言することはとても危険なことだ。この選挙の間、ブッシュが何を考えていたか想像すればいい。この怒った選挙民に対して。もし波及効果や巻き添え被害があったら、まだ選ばれていないリーダーにどのような影響を及ぼすか。ブッシュは誰かをリコールするのが嫌いだ。自分が2004年の選挙で次のリコールのウェイテイング・サークルに入っているからだ。

PB あなたはアメリカが嫌いですか?

 そのように錯覚している人は確かに多い。
この前もフォックス・チャンネルをつけたら、「マイケル・ムーアはアメリカを非常に嫌っている」と言っていた。私はアメリカを嫌ってなんかいない。テレビで何度も同じことを繰り返されると、みんな本当だと思ってしまう。おまけにそのことを口にしていたのはフロリダ州の議員だった。共和党右派の狂人だ。変なやつだ。フォックス・チャンネルもそうだが、そういう輩はまったくとんでもない嘘を本当と思わせるためにこういう嫌悪を撤き散らしている。フォックス・チャンネルから聞こえてくる声は、死にかかった恐竜の声だ。もう余命幾ばくもないことがわかっている断末魔の声だ。もうアメリカがリベラルに変わったことを彼らは認識している。怒った白人が絶滅の危機に瀕している少数派であることをもうわがっているのだ。白人は人口の35%だ。その35%が怒った保守派だ。つまり金体の12%にしかならないのだ。おまけに全体の3分の2近くが、女性か有色人かである。


いったい我々アメリカ人の倫理はどこにあるのか

PB アメリカのどこがいけないのですか?


 アメリカ人は素直な心を持っていると思うが、この怒った少数のアメリカ白人に国を統治するのを許してきた。あまりにも長く許してきた。極端な言い方だが、1万年も許してきた。我々の世代でそれが終わるのはどれほどグレイトなことか。彼らの断末魔の声が聞こえるよ。

この右派の狂人が我々をリードしてきたのだ。これは本当にパラドックスとしか言いようがないね。他の国の人がこの国に来ると、みんな我々の単純さに魅力を感じるが、同時にとても混乱するようだ。彼らにとって最も理解できないことは、どうして素直な心を持った我々が、国民の中で最も持たざる者を罰することを選んだのかということだ。どうして、国民皆保険制度をほとんどの人が欲しているのに、アメリカではできないのか、他の国の人には理解できないと思う。

ともかく、アメリカでは一番はじめに無力な人を痛めつけようとする。それがアメリカのやり方だ。シングル・マザーをいじめ、貧しい人をいじめ、読み書きのできない人をいじめる。まず、彼らのお金を取ってしまい、辛い生活を強いる。そして、薬物濫用の問題が出てくると、彼らに特別な場所を用意はするが、それはリハビリでもなく、治療でもない。彼らを医療施設に閉じ込めるよりもそのほうがはるかに安くつくからだ。この前ミルウォーキーにいたときに、車椅子の女性がいて、「どうして車椅子なのか」と聞いた。すると「筋ジストロフイだから」と答えた。それでも働かないといけないと言うんだよ。杜会保障のお金だけでは生活ができないと。やっと仕事を見つけたと思ったら、杜会保障給付金をカットされたと言うんだ。車椅子に座ってでも働きたいから、そして杜会に対して生産的でありたいから、仕事を見つけたのに、そうすることで罰せられたと彼女は言うんだ。僕は彼女にこう言ったんだ。「僕には筋ジストロフィの甥がいるが、長生きできないほどひどい。クリントンが96年に改革法案を通したときに、身体障害のある子供から杜会保障給付金を奪い取ってしまった。自助努力せよと言ったんだ。車椅子を使ってね。そういうことが、この国に存在する意地悪な精神なんだよ。こうしたやり方が、助けを必要とする人に対するブッシュの扱い方だL。僕は彼女に謝ったね。「こういうことに耐えざるを得ないのを心苦しく思う。悲惨だね。どうしてこうなのか理解できない」と。イギリスやアイルランドやフランス、ドイヅなど他の国に行けばわかるが、ほとんどどの国でも道徳とか倫理というものがあるだろう。例えば、隣の国のカナダとアメリカでは大変な違いがある。彼らにはちゃんとした倫理というものがある。「我々はアメリカ人ではなく、カナダ人だ。誰かが病気になって、かかる医者がいなければ、みんなが苦しむ」という倫理を子供のときから教え込まれている。「1人が職を失えば、みんなが苦しむ」と教え込まれている。カナダの保守派でも国民皆保険制度を支持している。イギリスでも同じだ。保守派でも支持している。自分の国を救うために彼らはやっている。危険な国に住みたくないからだ。常に絶望的になっている貧しい下層階級を作れば、犯罪や暴力が増えるに決まっているではないか。彼らはそんな国に住みたくないのだ。男であろうと女であろうと、一日のうち、いつでも安心して通りを歩きたいと彼らは思っている。夜中の12時から朝の7時までドアをロツクしなくてもいい杜会で暮らしたいと彼らは思っている。カナダは殺人発生率もゼロに近い。お互いに撃ち合ったりしない。あれだけ銃を持っている国民がいるのに、お互い撃ち合わないのはなぜなのか。もしカナダで誰かが誰かを撃てば、撃たれる人がカナダ人である可能性は高い。つまり、彼らの頭の中では、自分たちを撃っていることになる。だから不和を解決するために銃は使わないのだ。

いったい我々アメリカ人の倫理はどこにあるのか。自分さえよければいいと思っているのではないか。人のことはどうでもいいと思っているのではないか。本当に情けない国だ。

PB ブッシュ政権になってから、さらにひどくなったことは他に何がありますか?

 まず健康保険のない国民が6%近く増えた。300万近くの仕事が蒸発した。国の赤字も過去最高になった。お金持ちに対する税金カットとあわさって、ますます状況が悪化している。教師は解雇され、学校のプログラムは縮小され、学校崩壌が起きている。ークラスの生徒数は増加し、ますます教育がおろそかになっている。かつて連邦税で払っていたものを地方税で持つために、地方税を増加した。固定資産税も借になった。もう平均的アメリカ国民は、その痛みを感じているので、このブツシュのひどいやり方に気付いていると思う。最近の『ニューヨーク.タイムズ』紙も、ブツシュの最も堅実な支持者であった人が、ブッシュを見捨て始めたことを書いていた。もうブツシュは時間切れだ。ブツシュがいったい何を象徴しているのか、国民に説明し続けるのが我々の仕事だ。ブッシュの決めたことと局所的に感じる痛みを点で結びつけるとわかりやすい。そうすると立候補者が誰であろうと、ブッシュを排除することにそれほど躍起にならなくても、ブツシュが消えざるを得ないことがわかるだろう。

PB 同時多発テロ事件とイラク戦争に関する本格的な調査はまだ始まっていませんか?

 まさに今作っている映画が、それに関するものだ。『fahrenheit 911』(Fahrenheitは華氏の意味)というタイトルで、ブッシュとビンラディンとサウジアラビア王室に関するものだ。ブッシュは右派の政策を実行するために9・11のテロ事件を口実に使った。テロ事件がすべてなのだ。それがあったから、何もかもこうなったというのが、私が作っている映画のエッセンスだ。サイエンス・フィクションでコメディ的な映画だ。ブッシュはアホでマヌケな白人なので、言い訳ができるが、そういう意味ではイギリスは言い訳ができないと思う。トニー・ブレア首相には脳みそがあるから、何も言い訳ができないだろう。その点、億偶であるブッシュはそれだけでも口実になる。


神はえこひいきはしない。『神よアメリカに祝福を』はよせ

PB 『おい、ブッシュ、世界を返せ!』の第6章に「神は怒っておるぞ」(原題Jesus W.Christ)という章があるけれど、あれはどういう状況で書いたのですか?


 この本を執筆中のある夜、突如神様が現れて、「私が代わりに書く」と言われた。論文を書いている途中にそういうことって起こると思う。そこで神様が言いたかったことはたくさんあるが、ブッシュがあまりにも神様という言葉を使うので、その戒めという意味もあったのではないか。あまりにも気軽に神様という言葉を使うので、神様が怒ったのだろう。ブッシュは二言目には、神様に代わって行動しているとか、悪の枢軸と戦うのは、神様からの使命だとか、神様の名前を使いすぎだ。だから、神様が僕の執筆中に絶好のチヤンスだと思って、現れたのだと思う。僕は自分のことを準宗教的と考えているが、この章には何も侮辱的な意味はない。高校のときカトリックの神父になろうと思って、神学校に行ったくらいだ。

その章の最後にまとめた部分を読ませてほしい。

1 わたしがきみたちの神だ。あの男は神の子ではなく、パパ・ジョージの子にすぎない。いずれその時がきたら、あの男を地獄のVIP用駐車場で永遠に働かせてやるつもりだ。

2 わたしはブッシュにいかなる国にも侵攻せよとは命じなかった。相手が大きなナイフで殺しにきて、命乞いをしても、威嚇射撃をしてもむだだったような場合を除けば、人を殺すことはやはりまちがっているんだ。人間を殺すのは私の仕事である。おお、わたしはそれが好きなんだ。あまりわたしを怒らせると、今夜は1万人余分にこっちへとってしまうぞ!

3 わたしは子供たちが学校で私に祈りを捧げることを望まない。それは教会と眠りにつく前のベッドで行うがよい−−ちびっ子たちにはそれで充分だ。祈りを強制すると、子供たちはわたしをひどく嫌うようになるからな。あれはやめなさい!

4 胎芽は胎芽、胎児は胎児、赤子は赤子。わたしはそのように定めた。赤子になったものは人間になる。きみたち人間は厄介な存在だから、早々と人間にする必要はないと考えたんだ。ついでにいうと、大人同士の合意にもとづく関係であるかぎり、君たちがどんな性生活を送ろうとわたしにはどうでもいい。これはプライベートな閲題だ、よいな?

5 この世界と人間の創造についても、この際はっきりいっておく。"創造説"なるものはわたしが唱えたものではないし、支持もしていない。あれはニュー・ハンプシャー州の予備選挙やノンアルコール・ビールと同じくらいインチキなものだ。時代遅れの連中がわたしの名において何をいおうと、わたしの立場は進化論だ。誰が科学を創造したと思っている?至高の存在だけがあのような複雑かつ驚異的な理論を考えだせるのだよ。

6 わたしは十戒を刻んだ銘板であれなんであれ、宗教的な物品を公共の建物に置くことを認めない。ほとんど知られていない十一番目の戒めはこうだ。信仰は自分の胸の中でしっかり護れ。

7 ほかの宗教については二つのことを明らかにしておこう。まず、天国には七十二人の処女などおらんぞ。処女はイェスの母親このかたこちらにはいないし、きみたちがマリアに近づくことは許されない。だからダイナマイトで体を粉微塵にするのはやめておけ。そんなことをしてもわたしの宿屋で部屋はとれないからな。そしてもうひとつ、約束の地なんてものはないんだ。地中海とヨルダン川のあいだに大型トラツクで砂をざっと落としてつくったあの細長い土地はどうなんだって?あそこには誰も住んじゃいけない。まして世界が終末を迎えかねないほどの戦争をするなどもってのほかだ。あの土地はイスラエル人に与えたのでも、ムハンマドに与えたのでもない。大家である私の名を利用して殺し合いを続けるなら、この私がきっぱりとけりをつけるぞ。それが嫌なら喧嘩はやめなさい。

8 最後に、もうその『神よアメリカに祝福を。の歌はよすがいい。わたしはアメリカ以外の国を祝福しないとでも思っているのか?私はえこひいきをしない。ジブチ共和国の人が『神よジブチに祝福を。なんて歌うのを聞いたことはないだろう。『神よボツワナに祝福を』というのも聞いたことがない。彼らにはちゃんとわかっているんだ。神には後半九ホールをまわる時間はあるが、愛国的ナンジャモンジャに付き合っている暇などないことを。祝福したければ自分でしろ。わたしをだしにして優越感にひたるのはやめるんだ。おまえたちはほかの人たちより優ってなどいないのだから。愛国歌をうたって喜んでいる輩は地球上で一番阿呆な違中だ。そうは思わんかね?悔しかったらメキシコ大統領の名前をいってみろ。ほらな?どこの国の人にでもいい、あなたがたの隣の国の元首の名前はなんですかと訊いてみたまえ。ちゃんと答えるから。神よアメリカに祝福を?神はアメリカに宿題を出したいぞ(『同書』黒原敏行訳/アーティストハウス刊より)。

PB 何としてでもブッシュを排除しなければならないのですか?

 もちろんだ。リーバーマンはだめだけど、民主党候補者には、きちんとしたポジションを持つ人が出てくることは間違いない。ブッシュとの討論で、39もの問題で同意見を持ったゴアのような人で妥協する必要はない。ブッシュが次も大統領になれば、もうアメリカには回復の余地はない。

マイケル・ムーア 1954年ミシガン州フリント生まれ。89年、地元にあるGM工場の大量解雇問題をテーマにしたドキュメンタリー映画『ロジャー&ミー』で監督デビュー。2002年にはボウリング・フォー.コロンバイン』が世界中で大ヒット、カンヌ映画祭で55周年記念特別賞を受賞した。著書でも01年の『アホでマヌケなアメリカ白人』が記録的なベストセラーとなる。


関連書籍
マイケル・ムーア 「おい、ブッシュ、世界を返せ!」
おい、ブッシュ、世界を返せ!
マイケル・ムーア (著), 黒原 敏行 (翻訳)
アーティストハウス 2003年11月


マイケル・ムーア 「アホでマヌケなアメリカ白人」
アホでマヌケなアメリカ白人
マイケル ムーア (著), Michael Moore (原著), 松田 和也 (翻訳)
柏書房 2002年10月

 
 
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