ピーター・ウォーレン・シンガー/Peter Warren Singer
「戦争請負会社」の著者、P.W.シンガーに聞く
戦争民営化の実態
(月刊PLAYBOY 2005年5月号)
戦争請負会社
P.W.シンガー (著), 山崎淳・翻訳
民間会社が戦争を請け負っているという衝撃の実態を、世界で初めて包括的にまとめた書は「戦争請負会社」だろう著者のシンガー氏に電話インタビュー。今何が起き、何が問題なのかを聞いた。
民間の戦争請負業が急成長している背景には、三つの原因がある。
一つは、軍事力に対する需要と供給のギャップである。世界には平和が生じているどころか、現実はますますバイオレントな状態になっている。それに対応できるプロフェッショナルな軍隊がいないので、民間会社がその市場に送り込まれ続けている。
二つ目の原因は、戦争の性質そのものが変化したことだ。軍事がコンピュータライズされたシステムにますます頼るようになるにつれ、任務を遂行するには、技術のある民間会社のコントラクターを必要としているのだ。
三つ目の原因は、考え方の変化だ。民間軍事会社を利用する傾向は、もうすでに、アメリカだけのものではない。例えば、中国で最も成長している産業は、民間のセキュリティ会社だが、このように、世界中でも同じ現象が起きているのだ。
問題は、需要と供給のギャップである。いまやアメリカの軍事力は、疲れすぎてパンク寸前になっている。そのギャップを埋めるために、民間会社の兵士を入れなければならない。
軍事の民営化には、その国の軍隊にとって、メリットとデメリットがある。よい面は、普通の軍隊よりもはるかに専門的なことができることだ。また、必要なときに雇って必要がなければ解雇できるという利点もある。従って、きちんと競争させれば、軍事費を節約できる可能性もある。しかし現実には、きちんとした競争がないため、必ずしも軍事費が安くなっていない。だから、ハリバートンのように、政府に過剰請求をするという問題も起きてくる。イラクでのガソリン代を通常の3倍の価格で請求したり、出してもいない食事代を請求するといった問題が出てくるのだ。
もう一つの問題は、市場の規制がないことだ。こうした会社で誰がどういう仕事をしてよいのか、という点について何もコントロールできていないのだ。つい2、3ヶ月前にあった話だが、アフリカの赤道ギニアで、政府を転覆させるために雇われた会社があった。「ロゴ・ロジスティックス(Logo Logistics)」という会社だが、営利目的のクーデターを起こそうとしたわけである。
問題は、軍隊の中は法整備がきちんとなされているのに、民間の兵士には、それがないことだ。だから、犯罪を犯しても、罰することができない。イラクのアブグレイブ刑務所の事件で、米軍は、6名の民間会社の従業員が虐待に関わっていたことを突き止めた。彼らの名前も、どこにいるのかもわかっているのだが、新しい産業なので、それを取り締まる法律がない。したがって、この6人はまだ起訴されていない。誰もどういう法律で起訴していい川からないからだ。
私の本に対して、ほとんどの人はショックを受けたという。そして、戦争請負業が巨大産業になっていることに驚く。世界の50カ国で1000億ドルのビジネスとなっていて、2万5000人もの人が物議を醸す分野で働いているのに、ほとんどの人がそれについて聞いたこともない。
私は、軍事力の民営化を阻止すべきだと言っているわけではない。この本を書いた目的は、いま起きている現実を人々に知らせることなのだ。我々は賢くならなければならない。すでに起きてしまっている現象だから、それにどうやって取り組むかを考えるべきだ。軍事には、民営化に向いている分野とそうでない分野がある。イラクの例で言うと、刑務所の尋問には民間企業の人間を使うべきではない。武装してのエスコートや、部隊を輸送したり保護したり、軍事基地を守ったりすることを民間企業に任せるべきではなかった。一方、軍隊への給食サービスや建設部門などは、民間に任せてもいいと思っている。
ところがこれまでは、彼ら民間軍事会社を、法律上の空白で働かせてきたということになる。多くの人が、このことに気づいて、もっと議論することが必要だ。
ピーター・ウォーレン・シンガー
1997年プリンストン大学卒、01年ハーバード大学政治学博士号取得。米ブルッキングス研究所国家安全保障問題研究員。同研究所の対イスラム世界外交政策研究計画責任者。03年に「線戦争請負会社」を発表。
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