リチャード・フロリダ/Richard Florida
産業革命に匹敵する大変化が始まっている
「クリエイティブ・クラス」とは何か

(Diamond Harvard Business Review 2007年5月号)


日本は2005年に、総人口が減少に転じ、また65歳以上の高齢者が21%以上を占める「超高齢化社会」には、世界で最初に突入する。労働力人口の確保は、女性や高齢者、あるいは若者、外国人という、これまで軽視されがちだった「異質の力」をどれだけ有効に活用できるかにかかっている。その意味で、都市経済学者のリチャード・フロリダが経済成長の担い手として挙げる「クリエイティブ・クラス」という人材観は、日本の将来にとって示唆に富んだ選択肢を提示している。産業革命以来の大変化とされる、クリエイティブ経済とはいかなるものか、その主役たるクリエイティブ・クラスとはどういう人々か、フロリダ教授に聞く。


アメリカの都市経済学者リチャード・フロリダは、多くの先進国では、「クリエイティブ・クラス」と呼ばれるまったく新しいタイプの労働者が、労働力人口の三割を占めるようになったと指摘する。
クリエイティブ・クラスとは、新しいアイデアや技術、コンテンツの創造によって、経済を成長させる機能を担う人々で、その中心は、科学者やエンジニア、建築家、デザイナー、教育者、アーティスト、ミュージシャン、エンタテイナーであり、ビジネス、金融、法律、医療などの分野で、独自の判断に基づいて複雑な間題解決に取り組む知識労働者もこれに含まれるという。また、クリエイティブ・クラスの特徴は、職業上の分類にとどまるものではない。グローバルなレベルで価値観を共有し、金銭的な報酬よりも、内発的な報酬が動機づけに欠かせない、旧態依然の人材管理技術では手に負えない人々なのだ。アメリカではこのようなクリエイティブ・クラスに属する労働者は、50年の間に急増し、三七〇〇万人に達し、その所得水準は高く、全賃金所得のうち半分近くを占め、製造業とサービス業を合算した金額にほぼ匹敵している。

このように、クリエイティブ・クラスが一国経済に与えるインパクトは大きく、また、国境を越えて都市を移動していくなど、世界的に流動性か高いために、経済成長を担う存在として注目されている。都市間、企業間で世界的な獲得競争が展開されているのだ。フロリダの推計によると、クリエイティブ・クラスに基づく国際比較ランキングで、日本はスウェーデンに次ぐ世界第二位とされる。

そもそも、フロリダがクリエイティブ・クラスという概念に至った出発点には、一九九〇年代前半までに日本の製造現場を徹底して観察してきた経験がある。トヨタ生産方式の「カイゼン」に見られるような、日本の製造現場労働者か発揮するクリエイティビティが、新しい人材管理モデルの可能性をフロリダに予感させたのだ。しかし、日本産業界の強みであった「ものづ<り」も、製品ライフサイクルの短縮化がら行き詰まり感が否めず、継続的改善を超える「継続的革新」が求められている。また、去る二〇〇五年に、日本の総人口は減少に転じ、六五歳以上の高齢者が一二%以上を占める「超高齢化社会」には世界で最初に突入する。労働カ不足を埋めるには、女性、高齢者、若者、外国人といった、これまで軽視されてきた「異質のカ」を活用する必要が欠かせない。クリエイティブ・クラスが提示する人材観は、そうした日本の課題にとって示唆に富んだ選択肢である。

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