リチャード・クラーク/Richard A. Clarke
元大統領補佐官が明かす対イラク開戦の「不純な動機」
(週刊ポスト 2004年6月25日号)

9・11からイラク戦争へ
爆弾証言 すべての敵に向かって

リチャード・クラーク著/横井浩一・訳2004/06/05) 徳間書店

著者のリチャード・クラーク氏は、1973年に国防総省入省、昨年5月ホワイトハウスを去るまで、10年以上にわたってテロ対策大統領特別補佐官を務めた人物である。氏は今年3月23、24日に行なわれた「9・11委員会」の公聴会で、「プッシュ政権は問題をすり替え、不必要な対イラク戦争に踏み切った」と証言し、渦中の人となった。その公聴会証言とほぱ同時に全米で刊行されたのが本書だ。「政権を離れるとすぐにそれを執筆の材料にするような人間を軽蔑していた」というクラーク氏が、なぜこの時期に本書を上梓したのか?筆者の取材に彼はこう答えた。

「ブッシュ大統領は、サダム・フセインに個人的な憎悪を抱いていた。それがより大きな政策に対して、ブッシュの目を晦ませた。イラクは同時多発テロとは何の関係もないと私が証拠を持って説明しても、ブッシュはそれを無視した政策を行った。私は政権を離れる前から、この本を書く必要性を感じていたのです」

本書は、撤退命令が出た9・11当日のホワイトハウスの生々しい描写から始まる。続いて、レーガン以下、ブッシュ“シニア”、クリントン、そしてブッシュ現大統領の4名を時間軸に沿って登場させ、いかにして国際テロ組織アルカイダが誕生し、どのようにして力を蓄えていったか、また、当時のテロ対策はどのようなものであったかを描き出している。クラーク氏は、まだアルカイダがそれほど知られていなかった時代からビンラディンの存在に注目し、潤沢な資金の調達方法や、各国に潜伏している活動家の情報を掌握するなど、テロの脅威を誰よりも理解していた。一方、冷戦後のCIAやFBIはテロ全般への関心が低かったといい、日本での地下鉄サリン事件に際しても生物・化学兵器に対する彼らの認識は甘かったと嘆いている。

クラーク氏は日本の読者に向けて次のようなメッセージを筆者に託した。

「この本を読めば、世界中に影響を与えるブッシュの政策がどのように決定されるかがわかるだろう」
ブッシュのフセインに対する個人的な憎悪が生んだ代償はあまりにも大きい。


<著者紹介>元テロ対策大統領特別補佐官。1973年に国防総省入省。79年に国務省に移り、同省のテロ対策・安全保障の専門家として最前線で活躍。政治・軍事問題担当国務次官補などを経て03年退任。
 
 
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