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第4回 取材の裏側@ いかにして私は日本人初のマイケル・ムーア独占インタビューをモノにしたか?(前編)
「アホでマヌケなアメリカ白人」で一夜にして名を馳せた著者のマイケル・ムーアへの独占インタビューは予想以上に困難であった。日本側に連絡すると、もっと後回しになることはわかっていたので、とりあえず、アメリカのエージェントに連絡したが、開口一番「あなたは150番目です」と言われた。そこであきらめたり、順番待ちをするといつになるかわからない上に、たとえ順番が回ってきても日本初の独占インタビューになる可能性は低いので、ぼくにとってはまったく意味がないし、編集者も「それならいりません」と言うに決まっている。日本初の意味はぼくにとって大きい。
難しいほど、やる気が出る
150番目と言われたときは、あきらめるどころか、逆にこのインタビューをとればスクープになるからますますやる気が湧いてきた。どうやって一気に順番を飛ばすか、明けても暮れてもそのことを考えるのだ。その方法を四六時中考えるだけでぼくはわくわくするのだが、とりあえず前回述べたように、エージェントを相手にしないことだ。最初にやるべきことは、マイケル・ムーアの自宅の住所、電話番号を調べることだ。ぼくはほとんどの場合調べることができるが、自分の調査力で限界にきた場合でも、助けてくれるアメリカ人の知人がいる。そういうコネクションはこのなりわいでは絶対に必要である。なければ競争に勝てるはずがない。彼に頼んで今までわからなかったことはない。もちろんぼくが取材のために必要であるから、調べてくれるのである。
しかし、自宅がわかったからと言って、いつでも自宅を直撃してうまく行くとは限らない。逆効果になる場合もあるから慎重を要する。また有名人になると長期間留守にしている場合もよくあるので、自宅に行っても無駄足に終わることがある。
マイケル・ムーアのときは、彼自身がアポなしでチャールトン・へストン(全米ライフル協会会長)を直撃しているので、アポなしで自宅に行くことも考えた。もし文句を言われれば「あなただってアポなしで、ヘストン氏を直撃しましたね」と言い返せばいいと思った。しかし、長期間留守にしている可能性があることも考えて、とりあえずは彼の直属の秘書の連絡先を調べることから始めた。英語でscheduler(スケジュラー)というが、スケジュールを管理している人のことだ。
交渉、交渉、交渉
そこでもう一回アメリカのエージェントに電話して、ムーア氏のスケジュラーの連絡先を聞くが、最初は「それは教えないことになっている」とこれまた決まりきった応対である。「ムーアの自宅の電話番号を持っているが、自宅に電話してもいいのか」と強く出ると、「それは困る」と譲歩し始める。自宅の電話番号を調べる意味は、こちらが少々強く出ることができるからである。自宅に電話してはいけない、という法律はない。ぼくは、「自宅に電話しないけれども、あなたと話していても何の進歩もないし、毎日何十回も私からの電話に対応するのがいやであれば、私に彼の直属の秘書と話させた方が賢明だと思う。双方にプラスになるだろう。誰から聞いたかは絶対に言わないから心配するな」とかなりの早口でさっと言う。こういうとき重要なことは相手に考えさせる余裕を与えないことだ。「協力しないと、自宅に電話する」とは決して言わない。ただ相手がこちらの発言をどう解釈しようとそれは勝手だ。
とにかく相手に考えさせる余裕を与えない
相手が、ぼくに教えた後に後悔しようとしまいとぼくには関係ない。相手に考えさせる余裕を与えないことがコツだ。英語が下手であればそれは論外だが、そういうときは自分が日本人であることを忘れてアメリカ人になりきる。相手もこちらが外国人であることをすでに忘れているはずだ。取材交渉ではなく、あくまでも直属の秘書の連絡先を聞き出すことだけが目的なのだ。普通のアメリカ人はかなり早口でしゃべるので、それと同じくらい早口でしゃべることが重要だ。相手もこちらのリズムに乗ってしまうと案外さらっと言ってしまうものである。CIAエージェントが早口でしゃべって情報をさっと聞き出し、ガチャンと電話を切るシーンが映画に出てくることがあるが、それとよく似ている。
ここまでくれば、150人のうち100人は一気に飛ばすことができる。あとはムーアの講演と記者会見の日程を2,3週間分聞き出すことだ。さっそくそのスケジュラーに電話するが、「ここ2,3日の予定しか言えない」と言う。ムーアはブッシュ批判が日増しに過激になっているので、いつ暗殺されてもおかしくない状況に追い込まれているのだ。予定を早めに教えて爆弾でも仕掛けられたら一大事だ。笑い事では済まされない。 (第5回に続く)
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