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産経新聞 2007年12月2日



ジャーナリズムの世界に入って24年になるが、私の基本姿勢は、インターネットや通信手段がどれほど発達しても、現場に行き、直接会うことだ。締め切りの関係上、海外への電話取材で終わらせることも多いが、あとになっても当人にできるだけ会うことにしている。生きている間に深く語り合える人の数は知れているが、こうして会う人は、生きることに多く示唆を与えてくれる。

全米の耳目を集めたナンシー・クルーザンの尊厳死取材も「死」や「余命」を考えさせられた。紆余曲折を経た裁判で娘を死なせる権利を勝ち取り、栄養補給管を外すのだが、その裁判で不撓不屈の精神で闘った父親は、6年後自らの命を絶った。,娘を死なせることに感情面では反対だったのだろう。何回も取材したダイアナ元妃の死も、謎が多く残る。事故は今なお論争の的で、ますます「人生は短い」と意識させられる。

さて、自分がいつどうやって死ぬのか。それは知りようがないが、壮大な目標を持つことは行動方針に影響し、限られた余命を充実させるエネルギーを与えてくれる。その目標の一つは、英語でノンフィクションを書くことだ。最近取材した中国人作家、イーユン・リー氏は母語の中国語で一切書かず、英語で小説を書き、数々の賞を受賞した。

その一つ、オコナー国際短編賞は、村上春樹氏が第2回で受賞したことで知られる。彼女は第1回受賞者だった。村上氏が英語で書いていたら競争になっていたかもしれないという。それほど世界では英語で書かれた本が注目される。これを母語を捨てることと勘違いしてはいけない。なぜなら、彼女の受賞理由は『千年の祈り』に代表される豊潤な読後感だった。簡素でエレガントな文体は、彼女の人生そのものだ。

母語は人格形成に欠かせない。バイクで世界を旅した伝説の投資家、ジム・ロジャースは私に語った。"Life is short ; ride hard and far." (人生は短い。崇高な目標を持ち全力で駆けよ)


 
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